子どもの前で間違えられない! 意外な「和製英語」

佐々木正孝

メディアにも、会話の中にも和製英語があふれています。だけど、それがネイティブスピーカーにとって「間違った英語」だったら? アメリカ在住経験を持つ英語講師に「和製英語のリアル」をうかがってみましょう。

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えっ、これも和製英語? 要チェックワードがズラリ!

 

私たち日本人は、外来語として多くの英語を取り入れてきました。日本語化して辞書に載っているカタカナ英語も多数あります。

しかし、その中には、日本で生まれて日本だけでしか通用しない和製英語も多くあるんです。有名なところではゴールデンウィークやバイキング(=buffet ビュッフェ)、ナイター(=night game ナイトゲーム)、パン(=bread ブレッド)などなど。皆さんがご存知の和製英語も多いはず。

 

私たちがよく使っていて、実はネイティブには通用しない和製英語、他にはどんなものがあるのでしょうか。英語講師の上田美咲さんにガイドしていただきました。

 

 

  • キャッシュカード
  • キーホルダー

 

 

 

「キャッシュカード。これは欧米で使うと『?』と思われるはず。なぜなら、キャッシュ(現金)とカード(主にクレジットカード)はまったく別モノ。銀行のカードは、しいて言うならbank card(=バンクカード)ですが、クレジットカードも合わせてcard(=カード)と呼ばれることが多いです。

キーホルダーも同じです。正しくはkey chain(=キーチェーン)。『ホルダー』はストックホルダー(株主)のように、人、者を表す意味なんです。そこに、(日本で言う)キーホルダーのような小物が出てくると、欧米人は戸惑ってしまうんですよ」

 

ノート+パソコン、キャッシュ×カード、キー&ホルダー……何となく伝わるだろうと思っていても、どれもネイティブにとって予想外の組み合わせ。日本人が「鍵人」と言われてもキーホルダーを連想できないのと同じです。

続いて、単語はそのままでもまったく意味が通じない和製英語を教えていただきます。

 

 

  • スマート
  • ピアス
  • セレブ
  • ドライヤー

 

 

 

「日本では身体のスタイルを表現する時に『スマートですね』とよく使いますよね。だけど、本来は『頭がいい』という意味なんです。体型の形容ではthin、slimが使われますね。

ピアスもちょっと違いますね。日本だと、穴を開けて通す耳飾りがピアスで、穴が開いていない耳飾りはイヤリングですよね。

しかし、ピアス自体は『穴を開ける』という意味で、日本語で言うピアスは欧米ではearring(イヤリング)と呼びます。……そう、ピアスとイヤリングは区別がないんです。あ、イヤリングは2つあるので複数形になって、earringsなので、こちらも要注意ですね。

テレビをはじめとしたメディアでよく使われるセレブも気になりますね。日本ではブルジョワというか、お金持ちの方々をセレブと称していますが、欧米のセレブリティは『有名人』という意味なんです」

 

セレブは、そもそもcelebrityという単語を短縮したもの。つまり、しいて文字化するなら「celeb」?

上田さんは、ホテルなどで使うと思わぬ誤解を招きそうな、観光“あるある”和製英語も教えてくれました。それがドライヤーです。

 

「ドライヤーと言えば、向こうでは洗濯用の乾燥機のことを指します。髪の毛を乾かすのはhair dryer(ヘアドライヤー)。ですから、ホテルのフロントに『ドライヤーを借りたい』と言うと、ランドリールームに連れていかれるかもしれませんよ(笑)」

 

「サラリーマン」=月給人間!?

 

上田さん自身も、和製英語を使ってプチ失敗をした経験があるそう。

 

「父の海外赴任に伴って、私がアメリカに住み始めたのは中学1年生の時でした。日本人学校ではなく、現地の中学校に通うことになったんです。

渡米したてで、まだあまり英語を話せない段階だったんですが、将来の夢を発表するような授業があったんです。

『ゆ、夢……!?』と、13歳の頭で必死に考えたんですが……英語で言えて、しかもパッと思いつく職業は『サラリーマン』しかなかったんですね(笑)。

そこで、『サラリーマンになりたい』と発表したら、みんな怪訝な顔をするんです。そりゃそうですよね、サラリー=月給ですから、『月給人間になりたい』って 言っているようなものですもの(笑)。後でoffice worker(=オフィスワーカー)が正しいと知りましたが、今でもハッキリ覚えているエピソードです」

 

ミスを恐れず、英語への興味のステップとして考えて

 

子どもに間違って教えていませんか? 外国人には通じない「和製英語」を英語講師に聞きました

 

単語ですらネイティブに通じないのですから、文法の言い回しや、あいづちに使う間投詞も日本テイストだったら、なおさら通じません。

 

「文法でも気になることは確かにあります。私もスクールでよく注意していたんですが、日本の英語学習者は、『大体~』という時に、『almost』から始める人が多いんです。これって、正しくは『most of~』。英文法に、almostから始まる文章はないんです。

あとは『more better』ですね。モアベターとして和製英語にもなっている印象が強いんでしょうか? betterは比較級ですから、moreをつけると重複してしまいます。

あいづちでは、『えーと』という意味を持たせて『so』を使う日本人が多いんですが、これも適切ではありません。つなぎ言葉としてsoを使うことはありません。なぜならば、というように前置きとして使うのがsoなんです。

『so, so』と連呼していると、ネイティブは非常に落ち着かなさを覚えてしまうはずです」

 

あいづちですら和製で話してしまっていたとは……。子どものお手本になるような大人は、単語はもちろん、文法もきちんとして、和製英語をシャットアウトしなければいけないのでしょうか。

 

「そんなことはありません。ミスを恐れて口ごもったり、沈黙してしまったりするよりは、むしろ積極的に発言していった方がいいと思います。

英語圏の人たちは、相手が間違った英語を使っていれば、返答の中で正しい英語を使ってリードしてくれます。ことさら指摘されるようなことはないですよ。

最初から完璧な文法で話せる人はいません。日本人は文法が強いと自認していますが、話す際にはその文法に縛られて間が空いてしまうことが多いんです。それではテンポの良い会話ができません。間違いを恐れず積極的に話していって、その中で正しい単語、言い回しを覚えていけばいいんです」

 

上田さんによると、「和製英語をとっかかりにして、子どもに英語に興味を持たせることは有効」とのこと。なるほど。

 

「(一緒にサッカーを観戦しながら)ロスタイムって言っているけど、これは日本だけの言葉なんだ。英語ではAdditional Timeって言うんだよ」

 

などと言えたら、子どもの興味も増していきそうです。「和製英語=悪」として見るのではなく、正しい英語学習への道筋の一つとして活用していくのがモアベター……いや、ベターなんですね。

 

 

お話をうかがった方:上田美咲(うえだ・みさき)氏

父の海外赴任に伴って、アメリカ・ニューヨークに中学~高校の期間滞在。英語のみならず、アメリカ文化を学んで帰国。大学を卒業して英語講師に。ベビー、キッズから一般、英検対策クラスまで幅広く担当している。

 

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この記事の筆者について

佐々木正孝

PROFILE

秋田県出身。情報誌、英語教育ガイドのムックなどで執筆するフリーライター/編集者。アメリカ留学経験を持つ妻のもと、家庭でも2児の父として英語教育のアシストに悪戦苦闘する日々。

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