英語の勉強法について、これまでいくつか紹介してきました。今回は、英語教育に長年携わってきた上智大学名誉教授・吉田研作先生に話を伺いました。現在も動画や講演会などさまざまな場所で発信を続けている吉田先生が、きちんと続ければ誰でも着実に上達することが可能な英語の勉強法を教えてくれます。
教科書通りに暗記をするより、毎日英語をつぶやくだけでいい!?
先生のオススメの勉強法は、朝起きてから夜寝るまでのことを英語でリアルタイムに表現するというものです。朝起きて、顔を洗って、トイレに行って、食事して、服を着替えて、と動作の一つひとつを英語で言ってみるそうです。
「その上で、その時の気持ちも英語で表現してみます。まだ眠いとか、今日は学校に行きたくないとか、友達に会うのが楽しみだとか。それができたら、今度は、状況を説明します。友達に何時にどこで会うとか、学校のどこで会うとか。それもできるようになったら、今度は、この後何をするつもりか話します。行動、気持ち、状況、目標という4つのことを、最初は自分がわかる短い文章でよいので毎日言ってみてください。そして、夜、4行だけでよいので英語で日記を書きましょう」(吉田先生)
「この授業、つまんないな」とぼやくことができたら上出来だそう。それに加えて、好きな洋楽や洋画などで英語を聞いたり、好きな本の原書を読んでみます。毎日、これを繰り返すだけで英語の4技能(リスニング、スピーキング、リーディング、ライティング)を実践していることになると吉田先生は話します。
「4技能をバラバラに学ぶのはもう古いのです。聞いたら話す、とか一緒に学ぶ方が定着します。たとえばリスニングで難しいのは電話の聞き取りですが、聴覚だけでなく視覚など五感をフルに使った方が相手の言葉を理解しやすいですよね。私は10代の頃同時通訳の練習として米軍のラジオ放送を聞いて、日本語に訳す練習をしていましたが、現在は英語のリスニングは、ビデオや動画など、視覚材料を利用したさまざまなツールがあります。リスニング以外でも、中学の英語の教科書をうまく使えば英語力を伸ばすことができます。中学英語はやさしく取り組みやすいので、英文を目で追いながら、同時に日本語にして、声に出して読むとよいでしょう」(吉田先生)
英語上達の秘訣は好きなことで英語に触れること
とはいえ、こと入試などのテストの準備をするためには、英語のネイティブの人が入試問題をすべて解けるとは限らないように、設問に対する慣れは必要です。いわゆる入試の「型」を身に付ける必要がありますが、吉田先生は高校2年生までは、「型」はいらないと言います。
「高校2年生までは、先に述べたように毎日しっかり英語に触れていれば、人によっては高校3年生の夏以降からでも、受験には間に合います。少なくとも高校1年生はしっかり英語と触れ合い、いろいろなものを読んで聞き、独り言でもよいので話して書くということに集中してみてください。それをきちんと毎日続けることが一番大切です」(吉田先生)
それでも、英語への苦手意識の強い人は不安になりそうです。
「そういう人は、どうして苦手になったのか振り返ってみてください。様々なアンケート結果を見ると、英語は好きだけど、英語の勉強は嫌いという人が多いのです。海外の映画や音楽は好きだったり、学校のALT(外国語指導助手)と話すのは楽しいという人はいるのに、教科書の勉強は苦手という人はたくさんいます。それはその勉強方法が合っていないからで、自分に合った勉強方法を見つけることが一番です。つまり、自分が好きなことから探すことです。人と英語を話すのが恥ずかしくて苦手という人も多いですが、自分の1日を英語で表現するのは一人でできますよ」(吉田先生)
一人で1日のできごとを英語でつぶやくことを実行しても、合っているのか不安です。その正誤は、どうやってチェックしたらよいかも聞いてみました。
「英語の表現集で確認し、それでもわからなければ、あとで高校や塾の先生に聞いてみてもいいですよね。UGUIS.AIのような添削機能があるAIアプリで確認するのも一つの手段です。ただ、すぐに正解を求めるのではなく、自分で考える時間も大切です。AIなどを使う前に必ず、まず自分の力で英語を使ってみてください。一度話したり書いたりしたものを見直して、自力で修正できるところまでやってみてください。アプリで確認するのはその後が一番効果があります」(吉田先生)
「つぶやき英語勉強法」は、準備いらずですぐできます。今日からさっそく試してみてください。
取材協力:吉田研作先生
PROFILE 英語学・英語教育学者として、長年英語教育に従事。テレビ番組でも活躍しながら多数の書籍を上梓。文科省『「英語が使える日本人」の育成に関する行動計画』の第1研究グループ・リーダーを務める。上智大学名誉教授、教育総合研究所理事。


