英語の交渉は「雑談で会話をほぐす力」が決め手!

斉藤真紀子

オージービーフ、ナッツ、ホホバオイル……。多種多用なオーストラリアの食品を日本にアピールするため、奔走しているのがクィーンズランド州政府 駐日事務所で商務官を務める髙嶋大士(だいじ)さんだ。両国のビジネスの架け橋として活躍する醍醐味についてお伺いします。

オーストラリア クィーンズランド州政府 髙嶋 大士

 

 

ファシリテーター的な役割でいいものをプッシュする

 

 

クィーンズランド州政府の公務員という立場で仕事をされていますが、どのような役割ですか?

 

主に、クィーンズランド州の食品を日本に輸出するため、オーストラリアの生産者と日本の商社、輸出業者、卸売業者をつなぐ役割を果たしています。

 

扱っているのはブロッコリーやマンゴーなど農作物、ナッツやチョコ、クッキーなどの加工食品、オージービーフの肉類などあらゆる種類ですね。実際には、オーストラリアから来るお客様(生産者)に同行して、日本の企業との間に入って交渉を手伝ったり、オーストラリアの生産者から「これを日本に売り込みたい」という問い合わせもよく来るので、それに対応したりもします。

 

もうひとつは日本の企業がクィーンズランド州に進出する支援の役目です。たとえば日本のファストフード企業が店舗を出したい、というような場合ですね。

 

 

輸出促進のために、オーストラリアと日本の交渉の通訳として、間に入ることが多いのでしょうか?

 

通訳というより、取引(ディール)を大きくするためのファシリテーター(議論を促進する)の意味合いが強いですね。いいものを「プッシュ」しなければいけない、営業的な役割がありますから。オーストラリアのお客様が日本の企業に商品紹介のプレゼンテーションをするときに、どの部分を強調したらいいのか、日本市場の調査をしたうえで、助言もします。コンサルテーションに近い仕事ですね。

 

たとえば、オーストラリア産のブロッコリーを日本に売り込みたいというリクエストがあるとしましょう。最近アメリカからの輸入が多いので、事前に日本の輸入業者をまわって、アメリカ産の値段や商品の聞き取りをします。同時にオーストラリア産のサンプルを渡し、値段や品質についてフィードバックをいただきます。前向きな感触が得られれば、オーストラリアから生産者を連れてきて、直接日本の輸入業者に商品のよさを直接アピールする機会をつくります。

 

さらに日本の輸入業者をオーストラリアに連れていって、畑や生産環境をみて判断してもらうこともあります。

 

 

 

双方が信頼を得られるように方向づけるのも大切

 

オーストラリア クィーンズランド州政府 髙嶋 大士

 

 

交渉がうまくいかないときは、どのようにして対応しますか?

 

実際、真ん中にはさまれると難しいことも多いです。日本側は品質、企画、サイズの規制があり、オーストラリアは人件費などコストの壁もある。いろんな問題が起こってくるときに、私が間に入り、「こう主張されているのは、事情としてこういうことです」と会話をほぐしてあげることもあります。ただコストが見合なければ交渉がその先に進まないことにもなり得る。

 

ビジネスは結局、人と人とのつながり、ネットワークの側面も大きいと思うので、「この人は一生懸命やっている。いい人だから、何かしてあげたい」と双方が人として信頼を得られるように方向づけてあげるのも大切だと感じています。

 

やりがいを感じるのはどんなときですか?

 

やはり自分がサポートしてきたものが、お店に並んでいるのを見るときですね。はちみつやワイン、化粧品なども担当しているのですが、ふと足を踏み入れた場所で商品を発見したときは、お金で買えない幸福感を味わいます。ひとつの商品は平均で半年、長ければ2年ほどかけて日本に入ってきますが、そこにいたるまでのストーリーがそれぞれあるので、達成感は大きいですね。

 

英語で求められるのはどのようなスキルですか?

 

やはり交渉力が大事ですが、どうすれば相手に伝わるのかを考えると、日本語と異なる面があります。かしこまって、難しい言葉で話をすれば「冷たい人」と思われる可能性がある。電話でも同じです。英語に敬語は少ないですよね。にこにこ、やさしくわかりやすくしゃべることで、「いい人」という印象を与えられる。この人と仕事をしたくないと思われたらビジネスにつながらなくなってしまいます。

 

 

 

会話が弾むきっかけは「カンガルーは生きてるかい?」

 

オーストラリア クィーンズランド州政府 髙嶋 大士

 

 

「この人とビジネスをしたい」と相手に思わせる会話のコツはありますか?

 

単刀直入に「~社です」と、ビジネスの内容に切り込むより、5分、10分雑談から入ることです。そこで親しみやすい空気をつくる。天気のこと、家族のこと、会社は最近どんな感じか、業界がどうか、あるいは堅く考えずに、朝食べたものの話題だっていい。相手の国のことを知っていると、会話が弾みますね。オーストラリアといえば典型的な「カンガルーは生きてるかい?」なんていうネタでもいいのです。

 

外部の人だけではなく、組織内で会議をするときも雑談から入るほうが多いですね。相手が笑っているなど、リラックスした雰囲気になったことがわかってから本題に入ると、うまくいくことが多いので。

 

英語でのコミュニケーションで気を付けていることがあれば教えてください。

 

オーストラリアは地域によってなまりやオーストラリア独特のスラングもいろいろ。自分は12歳からオーストラリアに単身留学してオーストラリア英語を話しますが、それでも相手の言っていることがわからないことがある。そんなときは笑ってごまかして、雑談なら流します。ビジネスの内容なら、「イエス」と「ノー」をその場で言わないようにします。あいまいなまま次に進んでしまうとよくないので。

 

自分が言っていることが伝わっていないような状況のときは、もう一度その場で聞くか、メールをするか、「確認」を取るようにしています。

 

(次回に続く)

 

 

後編はこちら:

留学生活は「何もかもぶつかっていく」積極性がカギ!

 

 

髙嶋 大士 (たかしま だいじ)

髙嶋 大士 (たかしま だいじ)

1981年、名古屋市熱田区生まれ名古屋市立千年小学校卒業する少し前、6年生の冬に留学を決意し、一人でオーストラリア クィーンズランド州に留学。現地の中学校と高校を卒業し、ボンド大学の国際ビジネス学士号取得。その後職業訓練学校にて調理師の免許を取得し、同時にグリフィス大学のMBA修士取得。2005年 オーストラリア クィーンズランド州政府内閣府に就職後、2006年には第一次産業省の貿易投資部に移動。2008年にクィーンズランド州政府駐日事務所に移動。州政府最年少で商務官に任務。2008年から2011年まで教育を担当しクィーンズランド州への留学をPR。自分の経験や留学の魅力をアピールし、今現在では食品担当としてクィーンズランド州の食品・商品を日本に紹介したり、日本からのクィーンズランド州へ投資していただく企業などを探してサポートしております。

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この記事の筆者について

斉藤真紀子

PROFILE

フリーランスライター。上智大学外国語学部英語学科卒業、米ブランダイス大学院文化人類学、女性学修士号取得。日本経済新聞米州総局(ニューヨーク)金融記者を経て、朝日新聞出版「AERA English」編集スタッフ、週刊誌「AERA」専属記者。2010年よりフリー。社会、ビジネス、海外、エンターテインメントなど幅広い分野で執筆。共著に「お客様はぬいぐるみ」(飛鳥新社)

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