第34回:入試が変わる! 新傾向の入試に備えよう

本多 敏幸(ほんだ・としゆき)

高校入試や大学入試では、これからは新傾向の問題が出題されるようになることが予想されます。これに向けてどのような準備をしたらよいのでしょうか。

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これまでと異なる入試問題

 

2020年度から小学校、2021年度から中学校、2022年度から高校では新しい教科書が使われ、これに伴い入試問題の傾向も変わってきます。

 

教科書や授業の基準となる文部科学省の「学習指導要領」では、思考力、判断力、表現力を大切にした指導を求めています。したがって、入試にも、考え、判断し、表現していく問題がこれからどんどん取り入れられることになります。

 

例えば、友達からのEメール文を読んで、アドバイスを書く問題や、友人同士のディスカッションを聞いて、あなたがそれに加わり自分の意見を書く問題などが出題され始めています。

 

これらの問題で共通しているのは、問題を解く「あなた」の状況と、しなければならないことが述べられていることです。

 

例えば、「あなたはアメリカ人の友人のマークからのEメールを読んでいます」といった状況と、「マークの悩みについてアドバイスを書きなさい」という、あなたがしなければならないことが書かれています。

 

また、高校入試では話すことの試験(スピーキングテスト)が一部の県で導入されようとしています。今までの入試では「読むこと」の問題が主で、これに「聞くこと」と「書くこと」の問題がちょっと加わったようなテストでしたが、これからは「聞くこと」「話すこと」「読むこと」「書くこと」の4技能をバランスよく測るテストになる可能性があります。

 

 

 

新傾向の問題への学習法

 

【その1】 英文を書く問題への対策

 

英語で「表現する」力を測るには、話すことか書くことかということになります。ペーパーテストでは書くことでしか表現できません。

 

書くことの問題というと和文英訳を思い浮かべる人が多いかもしれません。または、「あなたが暇な時間にすることを書きなさい」といった「お題」についての自由英作文を思い浮かべる人もいると思います。

 

新しい傾向の問題では、あなたの置かれている場面や状況、行わなければならない(書かなければならない)ことが指定されています。

 

2019年4月に中学3年生を対象に行われた「平成31年度(令和元年度)全国学力・学習状況調査」では次の問題が出題されました。

 

指示文: 海外のある町が、外国人旅行客にも分かりやすいタウン・ガイドを作成するために、「学校」を表す2つのピクトグラム(案内用図記号)のうち、どちらがよいかウェブサイトで意見を募集しています。どちらかの案を選び、2つの案について触れながら、あなたの考えを理由とともに25語以上の英語で書きなさい。

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(平成31年度 全国学力・学習状況調査 調査問題 中学校 第3学年 英語 パート3「書くこと」大問10より)

 

このような問題に対処する英語力を身に付けるには、次のことを練習してみてください。

 

① イラストを説明(描写)する英文を書く

 

イラストの描写や、複数のイラストを見てストーリーを作るような問題に対処するために、教科書のイラストを説明したり、4コマ漫画を見て自分で考えたストーリーを書いたりする練習をしましょう。

 

② 社会的な話題について自分の意見を書く

 

様々な話題について自分の意見を持つことが大切です。趣味や学校のことなど身近な話題だけではなく、環境問題や食料問題など社会的な話題についても自分の意見をノートに書き留めておきましょう。

 

なお、書くことの具体的な学習法については、以下も参考にしてください。

 

第17回:「ライティング力」を高めよう(1)

第18回:「ライティング力」を高めよう(2)

第19回:「ライティング力」を高めよう(3)

 

 

【その2】 技能統合型の問題への対策

 

技能統合型とは、「聞いて書く」、「読んで書く」、「聞いて話す」などのように、複数の技能を用いた形式です。ここでは、読んで書く形式の問題を取り上げます。例えば次のような問題です。

 

指示文: アメリカに住んでいるあなたの友達のMarkから次のEメールを受け取りました。Markへの返信のEメールを書きなさい。

Hi, (あなたの名前).
Are you doing well?
I have good news! I can go to Japan for one week this summer!
My summer vacation is from June 11th to September 3rd.
When should I go to Japan? Where should I go? I want to learn some Japanese cultures. It’ll be my first time visiting Japan, so I’m very excited.
Give me your advice.

Your friend,
Mark

 

日本語訳:
ハイ、(あなたの名前)
元気ですか?
いいニュースです! この夏に1週間、日本に行けます!
私の夏休みは6月11日から9月3日までです。
いつ日本に行ったらいいでしょう? どこに行ったらいいでしょう? 日本の文化をいくらか学びたいです。初めて日本を訪れるので、とてもわくわくしています。
アドバイスをください。
あなたの友達、
マーク

 

これは、夏休み期間中のいつ、日本のどこへ行ったらよいのかアドバイスを書くタイプの問題です。Markがアメリカに住んでいること、日本の文化を学びたいと書いてあること、初めて日本を訪れることなども考えて書かなければなりません。

 

この種の問題に慣れるには、単に英語を書くだけではなく、状況に合わせた文を書く練習が必要です。教科書を使って、

 

  • 教科書の主人公になったつもりで別の主人公にメッセージを書く
  • 教科書の主人公に向けてメッセージを書く

 

といった練習を行ってみましょう。

 

また、何かを読んで感想や意見などを思いついたらそれを英語で書いてみるなど、工夫次第で様々な練習ができるはずです。問題集の問題を解くだけではなく、あなたの周りにあるものを題材にして英語の学習を工夫してみましょう。

 

 

『英語力を伸ばす学習法』リストページ

https://www.ei-navi.jp/news/nobasu/list/

 

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この記事の筆者について

本多 敏幸(ほんだ・としゆき)

PROFILE

東京都の教員として38年間勤務。現在、千代田区立九段中等教育学校、都留文科大学、文教大学で講師として教えるほか、NHKラジオ「中学生の基礎英語レベル1」の講師として活躍。ELEC同友会英語教育学会会長。学習指導要領の改訂に関わる。また、全国各地で教員向けの講演を行っている。
著書に、本多式中学英語マスターシリーズとして『反復基礎』『短文英単語』『速読長文』(以上文藝春秋)、『中学校外国語新3観点の学習評価完全ガイドブック』、『入試英語力を鍛える!授業アイデア&パワーアップワーク40』(以上明治図書)、『若手英語教師のためのよい授業をつくる30章』(教育出版)、『NHK CD BOOK 中学生になるまでに身につけたい! 小学英語 パーフェクト・レッスン』(NHK出版)など多数。

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